第1章

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 我ら陸軍第五小隊の使命は、敵陣の懐に踏み込み敵の内部から混乱させることだ。    使命は順調に進んでいた。森をかき分け谷を越え、敵陣めがけて前進していた。もちろん、それなりのリスクはある。敵の中に突っ込むのだら、敵軍に見つかってしまえばすぐに蜂の巣にされてしまう。だから、見つからないように少数精鋭の小隊で移動する。    我々第五小隊の信頼関係は凄まじかった。お互いに仲間の技量を理解し、お互いに補いながら、一つの生命体のような働きをしていた。これは大げさな話でなく、第五小隊の中の一人でもやられてしまえば、この小隊は機能しなくなる。戦場で機能しなくなった小隊は全滅を意味する。    だから小隊の仲間同士は信頼なくして共に行動はできない。相手の命を自分が握っているし、自分の命も相手に託している。そんな我々に嘘や偽り、隠し事などあってはならないというのが暗黙のルールみたいなものだ。  これは我々第五小隊だけに限らず、すべての小隊がそうだと私は思うし、そうあってほしい。なぜなら、小隊同士もお互いに連絡を取り合って任務を遂行しているのだから。  我々陸軍の強固な団結力は、敵軍を圧倒する力を持っていた。これは自惚れではなく、きちんとした結果も残していた。どの戦場でも勝ち進んでいた。  しかし、この自信が慢心に変わっていた。  我々は相手敵陣を制圧する勢いで前へ前へと進んでいた。いつものように順調にいっていると思っていた。だが、それは敵の罠だった。    敵は我々に追い込まれて後退していると見せかけていた。我々が敵陣奥深くに乗り込んでいる間、敵の別の部隊が我々の後ろに回り込んでいた。そして、まんまと敵に挟み撃ちされたのだ。  我々第五小隊は森の中を3日間逃げ惑った。第五小隊は全員なんとか命を繋ぎとめていた。しかし他の小隊との連絡は取れない状態だ。無事なのか、それとも全滅しているのか、全く分からない。  森の中を敵の遭遇に怯えながら逃げ惑うのには、そろそろ限界がきていた。体力、精神力、食料、銃弾、もうすべての物が残りわずかな状態だ。その中で唯一の心の支えが、第五小隊の5人の仲間が、今この時、生きているという現実だ。  しかし、誰も言葉にしないが、もう我々には死しか残された道はないと悟っていた。
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