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「そう? 私は古き良きって感じの方が好きだけどね」
「やっぱり、椎名さんは現代人向きじゃあないですね!」
「だから、なんだよその現代人向きって!」二回目は流石に突っ込みを入れた椎名だった。
「えへへ、過去人ジョークですよ!」
「やかましい」椎名は怒気の含まない声色で花子をたしなめた。
***
織乃花子はタイムトラベラー――つまり、過去人である。
そんな花子と出逢った椎名愛々は、彼女の面倒を見ることになったのだが――
これは、過去から来たという織乃花子と、お節介焼きの椎名愛々の――時代を結ぶ一つの真実を辿る物語である。
***
「ただいま……」
椎名は、いつものように座する花子の前を足取り重く通り過ぎ、奥のソファに崩れる様な形で腰を落として、背もたれにその身を預けた。
時刻は夜の九時を回っていた。
「今日もお帰りが遅かったですね……お仕事、お疲れさまです」
「んー? ああ、ありがと」椎名は生気の抜け落ちた様な声で返す。
「あの……毎日、すみません……」花子はバツが悪そうに俯いて、ぽつりと零した。
そんな花子の様子に椎名は苦笑いで応える。
「ハハハ……謝らなくていいよ。私は迷惑だと思ってないよ」
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