椎名とハナのしるし

2/16
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
「そう? 私は古き良きって感じの方が好きだけどね」 「やっぱり、椎名さんは現代人向きじゃあないですね!」 「だから、なんだよその現代人向きって!」二回目は流石に突っ込みを入れた椎名だった。 「えへへ、過去人ジョークですよ!」 「やかましい」椎名は怒気の含まない声色で花子をたしなめた。     ***  織乃花子はタイムトラベラー――つまり、過去人である。  そんな花子と出逢った椎名愛々は、彼女の面倒を見ることになったのだが――  これは、過去から来たという織乃花子と、お節介焼きの椎名愛々の――時代を結ぶ一つの真実を辿る物語である。     *** 「ただいま……」  椎名は、いつものように座する花子の前を足取り重く通り過ぎ、奥のソファに崩れる様な形で腰を落として、背もたれにその身を預けた。  時刻は夜の九時を回っていた。 「今日もお帰りが遅かったですね……お仕事、お疲れさまです」 「んー? ああ、ありがと」椎名は生気の抜け落ちた様な声で返す。 「あの……毎日、すみません……」花子はバツが悪そうに俯いて、ぽつりと零した。  そんな花子の様子に椎名は苦笑いで応える。 「ハハハ……謝らなくていいよ。私は迷惑だと思ってないよ」     
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!