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かおいろ
バレちゃったかなぁ。
学校を飛び出して全力で走って逃げてきた。
はっはっ、と短く白い息が出来ては消え、出来ては消える。
顔は真っ赤で、顔からも湯気が出ているような気がする。
突然の相談。
『宮崎から告白されてさ。どうしようって思って』
少し期待していた私はすごくがっかりした。
日曜日に明日話したいことがあって、と連絡をもらった。
もしかして、と思った。放課後まで授業の内容が特別耳に入らなかった。
好きって言われるかも。
付き合ってって言われるかも。
仲良しだったもの。特別な友達だし、でももっと特別な間柄になりたかった。
『宮崎とは全然話したことなかったんだけどさ。だけどずっと好きだったんだって。意識したことなかったんだけど、なんかかわいいというか、なんていうかさ』
なんていうかって何、と思った。
困ったような、照れてような顔をして。こんな顔、見たことない。仲良しで、いろんな表情を知っていたのに。
『小田はどう思う? あんまわかんないんだけど、付き合ってみようかな……』
どう思うって何?
思った。
だけじゃくて口に出ていたみたいだ。
え、ときょとんとした目が私の顔を捉えた。
『やだ』
『他の人と付き合うなんて言わないで』
『好きにしたらいいじゃん。私は……私なら良かったのに』
ジーン、と顔が、耳が、しびれるような感覚がして、それからどうしようもないほど熱くなった。
どうしようもなくって私は逃げ出した。
嫌われちゃったかもしれない。
めんどくさいって思われたかもしれない。
宮崎さんと付き合い出すかもしれない。
吐く息なんかより、真っ赤な顔からも出そうな湯気なんかより、もっともっと頭のなかは真っ白だ。
何がなんだかわからないのに、どうしようもなく涙があふれそうになる。
「小田!」
不意に聞きなれた声がして、私は顔を上げた。
「良かった、見つかった」
その時見たその顔は、さっき初めて見た顔と、同じ顔をしていた。
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