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意味が呑み込めずに私が固まっていると、彼は軽々とフェンスを越えてきた。驚く私は気にも留めずに
「空の旅へ出発!」
そう言うと彼は私の肩に手をかけて後ろに重心を傾けた。
私は咄嗟にフェンスを掴もうと手を伸ばすが、虚しくも空を切る。
そのまま下へ。
今まで感じたことのない恐怖を感じる
加速する体とは反対に、映像がスローになっていく。
鳥がはるか高くを飛んでいる。
これが私と鳥との距離。
ドスン、体に衝撃が走ると思いきや、ふかふかのマットに包まれた。
マットが何枚も重なっている。
周りにいる連中が共犯というわけか。
「5分あれば君を救えるんだよ」
彼は帰り際にそう残した。
ああ、そうだ。きっと5分あれば何だってできるんだ。
そう、こうして恋に落ちることも。
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