壁ドン

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 目覚ましのアラームは5:30に鳴り始める。  狙った時間にぱっちりと目が覚めればいいのだけれど、寝ぼすけな私はどうしてもずるずると微睡みを楽しんでしまう。  5度目のスヌーズ。時間は6:00。  ようやく意を決して勢いよく掛け布団をめくり、まずは電気ケトルのスイッチをON。  湯が沸くまで、夜間に湧いた口内細菌を洗い流すためのうがいと、お茶の用意を済ませる。  今日はいつもより頭がぼんやりしている気がしたのでレモングラスティーを選択した。  香りを立たせるためハサミを入れている内にケトルからカチンと無機質な音がして、沸騰を知らせてくる。  保温性はあまり良くないので、素早く手に取り、茶こしの中のレモングラスへと熱湯を流し込む。  途端に漂ってくる柑橘系の香り。それだけで意識が覚醒してゆく。  三角コーナーに手早く茶葉を捨て、火傷しないようにしっかりお茶を冷ましてから、少しずつ啜る。  それでも沸点に近かっただけあって、未だに結構な温度だ。  熱い塊がつるりと食道を滑り落ちていく感覚と身の内から匂い立つハーブの香りは、私の身体をしっかりと目覚めさせていった。     
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