2.ねぇ、わたしを捨てないで

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 キラキラ光る東京の夜景。それが綺麗であればあるほど、物悲しくなる。  これから美樹がやって来る。あの、脚が溶けるという奇怪な体験について話さなければならない。彼女は、それを知って、どう反応するのだろう? 頭がおかしい男性(ひと)だと思って、離れていくのかも。  ほら、やって来た。派手に手を挙げて、こっちに向かっている。  僕には、それがスローモーションのようにゆっくりと見えた。白いひざ下丈のスカートにトップスはネイビーの光沢のあるゆったりしたシャツ、ピンクのトップハンドルのバッグがアクセントになっている。    近くまで来て、僕が暗い表情をしているのを見て、心配そうに話し始める。  「ねぇ、病気って、大丈夫だったの?」  「あぁ、それがどうも。」  「どうも?」  「うん、精神的なものらしいんだ。」  「そう。」    僕は、あの時の、彼女と一緒にいた時の、症状というか、怪奇現象というか、幻覚というか、について説明した。真面目に、真剣に、包み隠さず。  すると、彼女は、途中でプッと吹き出して、「本気で言ってるの?」と笑った。  「ねぇ、私の気を惹こうとしているの?」  「いや、そんなんじゃなくて。」  「ミステリアスな男がモテるって、誰かから聞いたの?」  「うううん。」  「じゃぁ、言うけど、今、左脚はどうなってるの?」  「どうって?」    そう言えば、今のところ何も感じないでいる。この間とは違う。  そんなことを考える暇もなく、美樹は畳みかけてくる。  「見せなさいよ、ほら。」  「うん?」  「出しなさい、ほら。私が見てあげる。」  彼女が大胆にめくりあげた僕のパンツの(すそ)は、いつもと変らぬ左脚の(ひざ)から下の部分だった。  「何よ、普通じゃない。」  「えっ!」  僕もその部分を凝視した。溶けてない。ドロドロでもベタベタでもない。  「じゃぁ、あれは? あれは一体?」  「嘘つき。」と彼女は、微笑みながら言ってくる。怒ってる風ではないので安心する。 それで、僕の方も思わず微笑み返してしまう。  美樹は、「ねぇ、お酒、おかわりして、乾杯しない。」と提案する。  「いいね。で、何に乾杯するの?」  「あなたが元気になったことに。」と彼女は舌を出す。  「溶けずに君といられることに、かな。」と僕。「でも、心は溶けてるけどね。」  
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