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やけに現実に近い、その場の空気まで漂ってくるような夢だった。
いや、これは、夢ではなく、「記憶の中の現実」と言った方がよい。
僕は、短いおざなりのセックスをした直後の気怠さの中にいた。
ホテルのベッドで、僕は満里奈の隣にだらりと横たわり、天井を見ていた。
「もう、無理なんだよ。」と呟くと、彼女は裸のままで起き上がって、こちらに近づき、両腕で自分を支えながら、僕の上に跨るような恰好になった。
「どうしてなの? どうして無理なんて言うの? あんなに愛しているって言ってくれたじゃない。」
「どうしてって、どうしても、もうダメなんだ。」
彼女の何が駄目だったかは、今ではよく思い出せない。はっきりしているのは、彼女と僕とでは、物事に対する見方、とらえ方が決定的に違っていたことだ。
僕が彼女の目を冷たく見返すだけで何も反応を示さないため、満里奈は、僕の下半身に手を伸ばし、「ねぇ、最後にもう一度抱いて。」と懇願する。
僕は、慌てて彼女を跳ね除け、ベッドに腰掛けるような格好になった。
すると、彼女は、ベッドを降りて、僕の目の前で跪き、左脚に縋りつくような風にして、「お願い考え直して。私を捨てないで。」と涙ながらに訴えて来た。「お願い!何でもする!悪い処は何でも直す!」
「やめてくれ、離してくれ。」と僕は、叫んだ。
叫びながら、目が覚めた。
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