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「悪かったよ。お使い頼んで、結果入院だろ。見舞いにも来るって。連絡付かねえから探し回りもした。お前は俺をなんだと?」
「伝承マニアの変態ですかね」
「研究者だ」
「失礼。伝承オタクでしたね」
「研究者だ。聞けよ」
顔をしかめた先輩が、チェーン店の牛丼の袋を読んでいた本の横に乗せる。
「臭うと思ったら……」
「部屋の人には確認とったし、ちゃんと看護婦さんに許可も貰ってる。んなことしてたら昼が過ぎちまったが」
弁解めいた言葉を零す先輩を、まじまじと見る。
「なんだよ」
「意外とマメだなって」
「んなこと言うとやらねえぞ」
ビニールを取り上げようとするのを、本を手放してひったくる。ぱたりと本が閉じるのは、気にしない。
「いただきます」
いそいそとビニール袋の皮を剥いて、中のプラスチックの器を取り出す。
「んで、そいつを食いながらでいい。怪我したときのこと、いろいろ聞かれたと思うが俺も聞きたい」
「最悪ですね。見舞いに来て普通そういうこと聞きますか?」
睨んでみると、先輩がさっと牛丼の器を取り上げる。しばし睨み合いを続けたが、すぐに白旗を上げた。
「あまり話したくないのですが。言っても引き下がらないことも知ってます。苦労しますね」
テーブルを叩いて促すと牛丼が返ってくる。蓋を外して割り箸を取り出す。
「一つ、先に言っておきます」
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