発覚

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 先輩が預かっていた資料を返却するため山中にある片田舎へとバイクを走らせた。それが二週間前のことだ。  資料として拝借していたボロい本の出処は、過疎化が進む村に住む、気の良いお爺さんだった。お礼の茶菓子と資料を渡した後、資料の中身を指さして説明しながら質問をする。記憶をたどるようにして語られる回答をメモに起こして、お使いは終了。世間話を交えて陽が傾き始めた頃に村を発つことになった。帰りの話をしたら泊まっていた方が良いと言われたが、さすがにそこまで世話になる訳にもいかず、遅くなりすぎないようバイクを走らせた。  村を出てしばらく山道を進めば、山はすっかり夜に沈んでいた。それだけなら何も問題なかったが、徐々に霧が深くなって前を見通すことも難しくなる。そこで初めてお爺さんが引き止めた理由に思い至った。このままの状態で進むのは危ないと判断を下して速度を緩めようと思った時だった。その決断が圧倒的に遅かったことに気付かされた。急カーブに気づかず、ガードレールに突っ込んでいた。  派手に鳴った轟音の後に、浮遊感が続いて、その後には地面に体が打ち付けられる衝撃が来た。後から重たい物が嫌な音を立てて続いてくるのを聞きながら、何度も木や地面に打たれて、痛みに耐えている間に気を失った。
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