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紅《あか》の一族
朝霧紅緒は高校の登校中にいつも通る踏切で、普段は見ない光景を目の当たりにしたたずんだ。
駅のそばにある踏切は通勤通学時間ということもあり学生や社会人が多く、皆それぞれの目的地に向かって無駄なく歩いている。いつもの光景しか見えていないのだから誰も立ち止まる人はいない。たたずむ必要はない。
ただ一人紅緒だけがじっと踏切を渡ることなく、右手の甲を左手で血が滲みそうなほど握りしめていた。
どうしよう。紅緒は困惑していた。目の前に広がる景色に。
紅緒は普通の人間には見えないモノが見える。いや見えるだけでなく普通の人間が見えないモノをどうにかしなければならない義務を抱えているのだ。
今、目の前にいるのは牛の骨の頭を持ちそこから下は人間の骨組みと同じというまるで映画に出てきそうなイキモノ。化け物だ。手には大きな鎌を持っており骨であるにも関わらず赤い目玉と不気味な舌を口から垂らしていた。
身長は紅緒より五十センチは高いだろう。二メートルは優に超えている。
「学校の前なのに。嫌だなぁ」
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