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生徒たちが教室で朝の提出物や授業について、昨日みたテレビに関することなど話している中紅緒はそっと自分の席についた。席に着く途中で数名に「おはよう」と言われたが上の空で返した。
紅緒はカバンを机の上に置いて中身の教科書を出すこともせずに座り息をつく。息は見えないのにすぐに床に落ちていくほど重々しい。
朝から魔物に会うのは慣れない。今までも何度かあったが魔物に会うとすべての気力がそがれ学校に行くことができなくなったこともよくあった。今はそこまでではないがそれでも一日のほとんどの気力がそがれていた。
「おはよう、朝霧君。大丈夫?顔色が悪いけど体調悪いの?」
紅緒の目の前に現れたのは同じクラスの女子である川上真美子だ。ショートヘア―の髪の毛とおでこが出るようにピンで止められた前髪が特徴の、目が大きな子だ。紅緒とは中学校も同じで真美子自身が女子男子隔てなく仲良くできる性格と魅力のある子なので、紅緒自身も接しやすい仲の良いクラスメイトの一人だ。
「あ、大丈夫。ちょっと兄さんと喧嘩して」
とっさに嘘が出た。たいしたことがない内容だからという意味でこういう嘘をつくことは紅緒にとっては日常になっている。たぶん藤緒や雪緒もそうだ。
「喧嘩なんてするんだね!意外!朝霧君のお兄さんって大学生だっけ?」
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