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そしてサクラは有名ではないが美術大学を卒業したあとはフリーで油絵を描き個展や販売でそれなりに名を知らしめて来た。今は美術業界を相手にすることは殆どなく地域の大人向けの絵画教室を開いたり絵画のカルチャースクールの講師として働いている。さらに正親は現役を引退しているが元有名陶芸作家で今では趣味として日々作品を作っている。そしてトキは書道を幼いことろからたしなみ、若いころは有名な賞をいくつかとったり飲食店の看板の文字のデザインをしたりと活躍していたが正親同様今は趣味で書道を楽しんでいる。
いわゆる芸術系の生業に特化した家庭だった。家には小説などよりも美術史や絵画についての本が多くあり空中には土や墨の香りが常に漂っていた。
「すごいよね。うちは普通のサラリーマンとパートがからびっくりしちゃう。家族にそんな才能を持っている人がいるなんてすごいよ」
別におだてているわけではないのだろうがミーハー調に真美子は言う。嫌味っぽくないので気分は悪くないが幼いころからまわりから「すごい」と言われてきた紅緒はなんとなくこの反応が苦手だった。
自分が他の人とは違うということを改めて言われている気分になるのだ。
「うん。でも、まぁそんなんでもないよ」
すごいということはない。というのを言いたかったがそれを言っても大体の反応がわかるので答えない。
「お前だってここに入学できたのは絵のおかげなんだろ?」
「あ、山神君。おはよー」
横から会話に入ってきたのはクラスメイトであり紅緒が唯一仲がいいと言ってもいい山神巧だった。巧は紅緒の前の席でカバンを大雑把に置くとからかう視線を向けてきた。
「ああ、うん。そうだね」
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