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人に聞こえない大きさで紅緒はそう呟いだ。まさか会うとは思わなかった。この間退治したばかりなのにと心の中で愚痴をこぼした。
そのイキモノは普通の人から見れば「幽霊」「化け物」「妖怪」の類だ。映画にしか登場しないそして架空の存在で済まされている。
しかし紅緒と紅緒の家族にとってそれは日常で認識することができ、それらは「退治」しなければならない存在。
退治する術を紅緒と紅緒の家族は持っている。それを生業、仕事としているのだ。
「自分の日常生活よりもあいつらを倒すことを最優先に考えて生きろ。それはお前が死ぬまで決して揺るぐことはない」というのは親からの教えだ。小さいころから何度も何度もそう言われてきた。
もう自立して二年だ。一人で退治することは何度だってあった。でも何度経験しても恐怖や緊張はとれることがない。それどころか増す一方なのだ。
無視をすれば普通の人間に危害が及ぶ。そのイキモノは今にも舌を伸ばして人間の頭をなめとってしまいそうなのだから。
なめとられたからと言って普通の人間がそのイキモノを認識するわけではない。ただ頭をなめとられると生きる気力を失いいわゆる「鬱」の状態を呼び起こす。最悪の場合は自殺にまで追い込まれるか何か犯罪に手を出すかどちらかに堕ち。
死人か廃人になってしまうのだ。
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