紅《あか》の一族

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 退治しなくてはならない。でもこの人通りの多いところで結界を張って戦うことは多くの人の目に触れることになる。結界を張れば人には見られずにイキモノを退治することはできるが、いきなり紅緒が消えれば何人かは気が付くだろう。  普通の人間の前で自分たちの正体を明かしてはいけないというのも小さいころから毎日のように聞かされてきたからだ。  人間にばれては駄目だ。人間にばれるということは混乱を招き人間同士の争いに自分やそのイキモノたちが利用されることになる。  それは一族の「死」に等しい。  「オマエタチノコトハキイテイル。コロシテモイイト。マジョサマカラ」  歯がむき出しの口元がにやりと笑うそのイキモノ――「魔女の使い」通称「魔物(まもの)」。その笑みは何度見ても慣れない。心臓を直接針で刺されるような恐怖が足元から立ち込めてくる。  今回の魔物は大きい。すぐに仕留めなければ周りにも被害が及ぶし自分自身も無事ではすまないということは勘で分かる。  だが朝ということもあり人が多すぎる。魔物がもっと小型なら、人間の子供サイズならどうにか周りに気が付かれないように退治できる。。  だが紅緒はその時点でかなりの遅れをとっていることに気が付く。その逡巡をしている時点で魔物には多すぎるほどの時間なのだということを。     
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