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魔物が一瞬のうちに消えた。目を離していないのに凪だけ残して消えたのだ。そしてあたりを見回すよりも前にすぐ背後から地を這うような声がした。
「オソイ。オソイ。コンナモノナノカアカノイチゾクトハ」
「あ」
短い声を出して紅緒は振り向いて熱くなった右手を上げようとしたが間に合わないということが本能で分かった。魔物が振りかざす大きな釜が自分の首めがけて刃を向けているのだ。
ダメだ、と思った。これで自分の人生は終わったと本当に思った。命を懸ける覚悟などとっくにできていると思ったのに刃をむけられた瞬間に生への執着が心臓の鼓動を早くさせる。
その時だった。
「遅いのはお前だっての」
「アアアアアアアアア!!!!」
余裕のある声と断末魔が同時に聞こえた。紅緒はその声たちに圧倒されてその場に尻もちをつく。もちろん周りの人間には見えていないので不審そうに見ていたが声をかけるものはいない。
紅緒に襲い掛かってきた魔物の頭が二つに割れていた。それはまるで鋭い刃物で叩き切られたようで不気味に出ていた舌もきれいに真っ二つになっていた。
肉がないので血は出ないが魔物は苦しそうにもだえながら自分の背後を見る。
「オマエ・・・ハ」
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