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「しゃべりすぎなんだよ。お前はさ。とっとと消えな」
魔物は話している間に金髪の男に頭を粉砕され黒々とした煙を出しながら灰のようになり跡形もなく風に流されていった。
そこにはなにも残らない。魔物がいた痕跡も巨大な鎌もいつの間にか消えていた。
紅緒はまだ尻餅をついたままで魔物がいたところを肩で息をしながら見つめていた。立ち上がりたくても立ち上がれなかった。腰が抜けたというよりも全身の力が抜け、足への力の入れ方がわからなくなっていた。
「大丈夫かよ。こんなんじゃこれから先魔女に勝てないぞ」
「ごめん、兄さん。ありがとう。助かったよ」
紅緒の兄、朝霧藤緒はにやにやしながら紅緒に近づいて手を差し出して立たせる。紅緒よりもはるかに太い腕は頑丈で頼りがいがある。
いかにも遊び人の雰囲気の藤緒だが魔物を退治する手早さは紅緒の家族にも認められたもので、手練れである祖父ですら頼りにしている存在なのだ。
「ああいう時はすぐに殺ればいい。周りの人間に悟られないのも大事だけど何も守れなかったら意味ないからな。学校行けそうか」
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