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藤緒の的確な言い方に紅緒はうなづきつつ、それでも多くの人がいる中で魔物を倒すことを優先させる判断はかなり思い切りがいるものだと思った。
「行けるよ。大丈夫。ありがとう。それよりも母さんが心配してたよ。また女の人のところにいたの」
ここのところ藤緒は家に帰っていなかった。高校生のころから藤緒が数日家にいないことはよくあって、決まって女の人のところに入り浸っていた。もちろん、という言い方はおかしいけど両親は知っているし祖父母も知っている。もっと言えば藤緒と紅緒の妹の雪緒もだ。
どこで遊び方を覚えたのか藤緒は見た目の通り女遊びが盛んで常に不特定多数の女性の存在がある。どれも年上で一人暮らしの女性ばかり。そこを狙っているのだろうとも思ったけど、彼女たちが必ずしも恋人がいないというわけではないのでそれなりの修羅場をくぐってきた気配は話を聞かなくてもわかっていた。
藤緒はにやっと笑ってそれだけで返事としてすます。
「連絡くらいは取ったほうがいいよ。いくら女の人のところってわかっててもさ」
紅緒はそう言いのこしてその場を離れる。さっきまでいた人たちは皆駅に向かいそれぞれの目的地を目指している。
紅緒も自分が「普通の時の自分」がいるべき場所に向かう。主だるい体を引きずって。
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