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何かが、おかしい。
「知らないのか? おかしいな、そんな筈はないんだよ。だって、AI搭載の人間型全能労働ロボットの発明とその発売は世界的なニュースになって、たとえあんたが地球の果てにいても、耳に挟んだはずさ。それに、ロボットは次々に改良が重ねられて、新しい能力を搭載した新型ロボットのコマーシャルだって、そこかしこでやってる。たったいま、五年あまりの火星でのバカンスから帰ってきたばかりってわけでもない限り、知らないはずぁないんだけど……」
……。
……知らないのだ。
まるで、意味が分からなかった。浦島太郎にでもなった気分だ。AI搭載の? 全能労働ロボット? 五年? さっぱりだ。ニュースはよく見る方だ。朝なら新聞を、帰りのの電車の中ではネットニュースを流し読みくらいはする。そんなにニュースになったことなら見逃しているはずがないし、だいたいそんなコマーシャルだって見たことがない。
私は混乱していた。
ケーキの箱は紙製だった。持ち手の部分が、なんとなく湿ってやわらかくなってきているようだ。
女はしばし、考え込むそぶりをとった。そして、「あぁ」と、唐突に納得がいったという表情をした。そして、不意に、私の頭を……
ガンッ
強打した。
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