第十二話

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「ああ、最高のハッピーエンドを迎えたいからね」  そっと目をつむったまま一度だけ大きく深呼吸したメイは、自分自身に言い聞かせているように口を開いた。 「死神チェックを作ったのは人。だったらそのチェックの結果をくつがえせるのも人だよ」    死神チェックの結果をくつがえすだって……。正直言って僕はそこまでは考えていなかった。ただ『未来』から目をそむけるのはよそう、と思っていたのだ。  僕は彼女の言葉の意味をはかりかね、目を見開いてしまった。  しばらくした後、彼女はゆっくりと目を開けた。何かを決心したことを示すように力強い瞳だ。  そして柔らかな口調で僕に告げたのだった。     「ねえ、ジュンペイ。恋をしよ。恋をして自分たちの手で未来を作ろう」    それは放たれた一本の弓矢のように、僕の心をいとも簡単に貫いていく。   「えっ……」  言葉を失った僕に、メイは早口で続けた。   「死神さんにあらがって、未来を変えよう。恋愛成就が0回の未来なんて、やっぱりわたしは許せないもん」  そこでもう一度大きく息を吸い込んだ彼女は、晴れやかな表情で言った。     「わたしはジュンペイと恋をしたい」  噛みしめるようなゆったりとした口調だ。  しばらく僕は口を開けないでいた。     
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