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第十三話
………
……
翌朝。
食堂がいつになく賑やかなのは、テッチャンをはじめとした屋島花火工房の職人さんたちも一緒に朝食をとることになっているからだ。朝食後すぐに彼らは島を出るらしい。
食事を用意する数がいつもの倍以上であるため、この日ばかりは食事当番は一人ではなく、入所者全員で担当することになっているのだった。
「おっはよー! ジュンペイ!」
廊下で顔を合わせたメイは、何事もなかったかのように明るい調子で挨拶してきた。
一晩たっても僕には交わしたキスの感覚が頭を離れず、彼女を見ただけで顔が真っ赤になっているのが自分でもよく分かる。
「おはよう、メイ」
震えそうになる声をどうにか抑えて、つとめて穏やかに挨拶を返す。
するとメイは満足そうにニンマリと笑みを浮かべて、僕の左手をさっと握った。
「一緒にいこっ!」
「えっ? ちょっと恥ずかしいよ」
僕の制止など聞く耳も持たず、メイは僕と手をつないだまま廊下を歩きだした。
すれ違った職人さんたちは僕たちの手元を見て口ぐちに冷やかしてきたが、メイはますます上機嫌になっていく。そうしてついには弾むようにスキップしながらキッチンへと入っていったのだった。
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