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指の隙間から赤く晴れた頬が目に入ってくる。
僕は思わず眉をひそめた。
「大丈夫?」
「ああ、余命は短けえが、体だけは頑丈でな。メイのパンチ一発くらいなら唾をつけておけばすぐ良くなるさ」
唾をつければ良くなるって、ずいぶん古い迷信って聞いたことがあるけど、本当なのだろうか……。
変なことに僕が気をとめているうちに、ゲンさんはモップを手に持って、ぐいっと顔を覗き込んできた。
「しかし、本気か? メイと恋するなんて」
奇襲のようなつっこみに、顔がかっと熱くなり言葉がとっさに出てこない。
そんな僕を見たゲンさんは、モップで床を拭きながら大きなため息をついた。
「はぁ……。まあ、人の恋路をとやかく言うつもりはないけどよぉ」
そこで一度言葉をきったゲンさんは、グッと表情を引き締めた。
「それなりの覚悟は必要だぜ。なにせ俺たちには『余命』がつきまとってくるんだからな」
腹に響く重い言葉だ。
自然と口もとが真一文字に締められていく。
ゲンさんは僕から目を離し、拭いている床を見つめながら言った。
「来週には全員で死神チェックを受ける。そこでジュンペイとメイも『死亡予定日』が分かるはずだ」
「死亡予定日……」
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