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「ああ、余命が迫ってくると日付までしっかりと分かるようになるんだよ」
その話は入所した日にレイナ先生から聞かされている。
小さくうなずいた僕にちらりと視線を向けたゲンさんは、さらに続けた。
「二人とも同じ日が告げられるなんて『奇跡』はまずないからな。どっちかが先にその日を迎えることになる。もしメイの方が先にその日を迎えたら、お前さんは彼女の死を受け止めなくちゃなんねえ。その覚悟は絶対に必要になってくるぜ」
言われてみればその通りだ。
これからは『メイの死』も受け入れなくてはいけなくなる。
自分一人の死ですら、受け入れるのに苦悩してきたのに、果たして二人分を受け入れる余力が僕には残されているのだろうか……。
「それはモモカの様子を見てきたお前さんなら、よく分かっているはずだ」
シュンスケさんと愛を育んできたモモカさんは、彼の死後、深い哀しみにくれて1ヶ月以上も自室で療養していた。
今でこそ元通りの彼女に戻ったが、それでも隠れて涙を流しているのを何度か見たことがある。
もし僕の方が先にこの世を去ったなら、メイを深く傷つけることになってしまうのだろうか……。
自然と暗い気持ちになって、下を向いてしまった。
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