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解けたのは魔法か呪いか
化粧をして自身を着飾るという行為は、わたしにとって魔法に等しい行為だった。
可愛い洋服を着て化粧をし終えたわたしは、いつも表面をぴかぴかに磨いてもらった綺麗な石になったような気持ちになる。実際はそこら辺にに転がる石ころにすぎないような自分でも、きらりと光る宝石になったような気持ちになれた。
鏡台の三面鏡の中にはわたしがいる。父譲りの黒目がちの瞳、スッと通った鼻筋、母譲りの薄い唇、すっきりとした目元。
肌は綺麗な方だから、日焼け止めの上に薄く薄く下地やファンデーションを塗っていく。主張し過ぎない程度に頬紅を乗せて、仕上げにおしろいをはたいて、それから唇に色付きリップを塗って完成だ。鏡の中には変身したわたしがいる。控えめにレースがあしらわれている白いブラウスに、空色のスカート。
姉は「中学生のくせにマセてる」とか「生意気」なんて言ってわたしの額を小突いたりするけど、わたしはそんなことを気にしない。
鏡の中のわたしは、元のわたしを完全に打ち消していた。
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