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街の大きな門をくぐり、人魚の少女達が連れ立ってやって来た。赤に青に紫に緑と色とりどりの尾をもつ四人の少女がそれは楽しそうに歓声を上げている。今日初めて街に来たらしい彼女達にとって、真白の街は物珍しく見えるのだろう。
「ボケてなかったのね、あの婆さん」
と、気の強そうな青色。
「そんなこと言っちゃ駄目よ、お婆様傷つくわ」
と、大人しそうな紫色。
「ほらほら、そんなことより見て回るんじゃないの?
案内してって言ったの君達でしょう?」
と、どうやら以前にも来たことがあるらしい一番お姉さんな緑色。
行こう行こうと急かすように赤色が泳ぎだす。それを三人が追っていく。
人が残した夢の跡を物珍しそうに少女達は見て回る。ここは?ここは?と緑色に聞く姿は人間の少女と大差ない。
一つの大きな建物の前で紫色が立ち止まった。
「ここはなに?」
その建物は他の民家よりも大きく、そして荘重な雰囲気をしていた。シンプルでいて、なんとも大きな威圧を放つ建物に呑まれそうになっている三人に緑色は安心させるように説明をしだした。
「ここはね、図書館っていうんだって。沢山本っていうものが収蔵されているの」
図書館?と呟き首を傾げる三人。それもそうだ、海には本も紙もない。どこかに記載された物語もなく、人から人へと声で伝えられた物語ばかりだ。ゆえに、物語は時が経つうちに変わっていってしまう。
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