4章 カタチを変えた世界

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4章 カタチを変えた世界

頭を整理をするには湯船に浸かるに限る。 スゥー 僕は深く息を吸い込み湯船に頭から沈んだ。 ぽちゃん… 僕の頭が浴槽の深いところに沈むに従い僕の思考も深くなる。 僕は湯船の中に寝そべり、目を閉じた。 どうも、ボスの話が理解出来ない。 そんな複雑なことでは無い気がする。 でも…どうして突如、彼女は僕の前に現れたのだろう? 何故、ボスは彼女が見えたのだろう? ぽちゃん… バジャン! ぶはぁーっ! 湯船から出て息を吸い込むと大抵の問題は糸口が見つかるのだが、今回ばかりは皆無。 考えても理解し得ないことを深く考えるのはやめよう。 浴室の扉を開けて、洗濯機の上に用意したバスタオルを… あれ? バスタオルがない? あれ? 洗濯機も無い。 脱衣所を見渡すといつもと風景が異なる。 浴室に戻る。 あれ? 浴槽の色が違う。 浴室と脱衣所を交互に行き来してみる。 ここは… ここは… 「ここは何処だー!!」 と大声で叫ぶと僕の声に反応したように足音が近づいて来た。 足音が近くで止まると扉が開く音がした。 浴室に居た僕は恐る恐る脱衣所へ繋がる扉を開けると、そこに居た人物に僕は驚いた。 彼女だ。 彼女がいる。 僕は彼女を抱きしめた。 「ママ! お兄が変態!!」 彼女は僕を睨み付け、バタバタと何処かに走り去った。 お兄? どいういことだ? 彼女には僕そっくりの兄がいるということなのか? 僕の頭の中の疑問は渦巻を巻いた。 グルグルと頭の中が回ると世界が回った。 それから世界が溶け出した。 そして世界が溶けると同時に僕も溶けた、そして僕はそれまでの僕とは違う僕になった。 彼女の世界の中に僕は彼女の兄として固まった。
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