1章 彼女の世界

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この感情はいつも一時的なもので、彼女が僕の妹だという現実が、彼女に感じる愛おしさの種類を変えていく。 彼女への気持ちも氷と一緒。 身支度を済ませて家を出る頃には 溶けて水になり また顔を合わせる頃には また別の形に固まるのだ。 いつもそう 好きな女から 大切な妹に 変わるのだ。 けれどもこの日、僕の彼女への感情は変わらなかった。 それは、キャンパス内にいる彼女を見つけたことが原因だった。 それまで僕は自分の妹が大学生であることも自分と同じ大学に通っているということも知らなかった。 そんなことが兄妹であり得ることだろうか? そもそも僕がここの学生だと言うことを証明するのは学生証だけで、思えばもう3年もここに通っているというのに僕にとってこのキャンパスはあまりに馴染みが薄い。 それだけでは無い。 僕が生きるこの世界は僕にとってあまりに薄っぺらいのだ。 彼女を除き全てが。 その事に気づいた僕は走り出した。 彼女の元へ。 彼女は彼女の両隣に居る彼女の友人に僕を兄として紹介しながら僕と同じ表情を浮かべている。 きっと同じ違和感を感じているに違いない。 今まで気づかなかった違和感に気づくとやがて何かが変わった。そこから互いを抱き寄せて、口づけを交わすまでそれは一瞬の出来事だった。
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