排水溝奇譚

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 僕は道端の排水溝の中に入って仰向けに寝転がり、蓋を閉めて、その隙間から空を見るのが好きだった。  小学校の頃にこの趣味を自覚し、高校一年生になった今でもそれは変わらない。  しかし、この行為はとても卑劣な覗き行為と不可分だ。  いくら僕にその気がなくても、女性のスカートの中が見えてしまえば、それはまごうかたなき犯罪だ。  だが僕は僕で、この趣味をやめるわけにはいかない。  排水溝に入らないでいると、段々落ち着かなくなり、体が奇妙な動きを始める。  それでも我慢していると、奇声を上げながら人に襲い掛かってしまうのだ。  初めてそうなった時は小学生だったから大問題にはならなかったが、高校生の今ではかなりまずいだろう。  だましだましこれまで排水溝に入り続けてきたが、何か抜本的な対策が必要だ。  そこで僕は、なるべくさびれた、人通りの少ない路地を選んだ。  時間帯も真夜中にした。何度か下見したが、全く人間は通らなかった。  本当は青空が見たかったが、それは我慢することにした。僕がやっているのは異常な行為なのだ。全て僕の思い通りに希望をかなえるというわけにはいかない。  かくして、僕の排水溝ライフは、その裏路地で送られた。  ぴったりと溝にはまり、狭い覗き穴から漆黒の夜空を見る。  最高だった。全ての辛さや苦しさを忘れて、僕は忘我の境地に至っていた。
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