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その女が旦椋に話しかけてきたのが、およそ五分前の事
そして旦椋が状況を理解したのが、一分前の事だった
目の前を通り過ぎる人の目線が痛い。
そろそろ起き上がらなければならない。
旦椋は、重い腰を上げ駅前に止めてある自転車を取りに歩く
何だか夢を見ているように自分の足の感覚がなかった
ねえ、あなたあの「旦椋江入」よね!
その女は唐突にそう言った
自分が、唐突に女に話しかけられる理由がわからなかった
最初は知り合いで俺が忘れているだけなのではないか?
俺の知人が俺の個人情報をばらまいたのか?
そう考えたが、次の一言でそんな事は直ぐ砕け散った
あのわき役の!ほらっ序盤で死ぬやつ!
訳が分からなかった
俺は声優をやっている訳でも、俳優をやっている訳でもない
一般高校生そのものだったはずだ
序盤ってなんだよ、死ぬってなんだよ。
頭が痛い、普段なら唯の頭のネジが緩んだ奴だと思うだろう
だがしかし、そいつの目は嘘を言っているようでも、虚構を信じている訳でもなく妙なリアル感があった。
気づけば、周りの目線が此方に集まっているのが分かる
このままでは不味いと思い何とかやり過ごそうとする
「あの、とりあえず座りませんか?…
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