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そして、バイトの制服から高校の制服へと常になく急いで着替えた俺は同僚からアレを代金と引き換えに受け取り、店の中を覗く。
彼女が座っていた席は既に空席となっており、そんな俺の様子を見て同僚がついさっき席を立ったばかりだと教えてくれた。感謝を伝え、彼女がいつも消えていく出口へとダッシュする。
いつも眺めるのみ、読む本によってコロコロ変わる表情、一喜一憂する様子に心惹かれた。出来ることなら、その表情を彩り、向けられる先に俺はなりたい。
駆けた先、もう駅から出ようとしていた彼女に追いつき、正面に回り込む。
彼女の歩みを止めた俺は、弾む息を軽く整えすぅっと息を吸い込み、吐き出す勢いにそのまま言葉を乗せた。
「あの!すいません、さっきの…………」
目が合った彼女は驚愕に目を見開いていて、衝撃に固まる様子に俺は不安が募り、言葉が詰まった。
追いかけて来るやつなんて怪しいと思われたのだろうか?もしかして俺、不審者みたい?
一度勢いをなくすとどうすることも出来なくて、ただ彼女を見つめ、俺まで固まっていると、俺とは反対に衝撃から思考が動き出したらしい彼女は、何故かわたわたと視線を泳がせる。
そして手まで泳ぎだし、驚愕から『やっちまった』とでもいう様に表情を変えた彼女はガバッと勢いよく頭を下げた。
「ご、ごめんなさい!いつもそうなわけやないねんけど、いや結構いつもやけど、ストーカーとかとちゃうねん!いつも前に見えるから視界に入ってまうだけやねん!」
下げた頭を再度勢いよく上げた彼女はそれはもう必死にあわあわ、わたわたとほぼノンブレスで謎の言い訳を連ね始めた。
何故彼女が謝っているのだろうか?というかストーカー?むしろそれは俺の方じゃ……などと思いながらも彼女の言葉を聞くに、謎が解けてきた。
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