彼女に向かう

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彼女に向かう

2/4、時刻はもうすぐ20時を迎える。待ち焦がれているあの人は、姿を現す気配がない。 いつもの様に改札横のカフェでバイトに精を出す俺は、改札を抜ける人々を見送り、落胆の息をついた。 一方的に想いを募らせる相手は、サラサラ滑らかな黒髪にちょっとキツめな目元に化粧。見た目は可愛いより綺麗が似合うタイトスカートのスーツの多分、OLさん。 何も無ければきっと出来るキャリアウーマンなのだろうあの人は、その印象をぶち壊すアイテムをいつも装備している。 それは本。 小説、エッセイ、詩集、図鑑、漫画……何かにしろ本をいつも読みながら改札まで向かってくるのだ。 改札を抜ける為に本を閉じる瞬間。名残惜しげに、楽しそうに、満足そうに、時には泣きそうに、くるくるくるくるとその時により変わるあの人の感情に惹かれて、片想いを拗らせている。 いつも改札を抜けると右方向に消えていくあの人、現れるのは大体19:30頃。とっくに過ぎたいつもの時間に、見逃したのだろうかと気分が沈んだ。
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