最後のアイラブユー

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私の描いてた、ユウトとの将来。彼に似た可愛らしい息子とともに3人並んで歩く。真ん中に息子を挟んで、イチ、ニー、サーンの合図でジャンプをする。キャッキャと笑う息子の向こう側に愛するユウトの姿。息子を挟んで視線が合うと私の好きな目を細める笑顔。 永遠に続くと思っていた時間は急に終わりを告げた。 「余命宣告…ですか?」 「今の医療では治すことのできない病のため、何もすることができません」 淡々と話すその医者は、私と年齢の差をあまり感じられず同い年のように思えた。 「つまり、死ぬことは確かだけど、いつなのかは不明ってことですね?」 物分かりが良いふりをして私は返事をすると、医者は少し驚いた様子でそうですと答えたあと、もう一度言葉を選ぶように話し出す。 「大抵の方は、この話をすると取り乱して首元を掴んでこられたり、その場で泣き出す人もいます。でも、貴女は受け入れたように、私の言葉を理解した。何故ですか?」 「受け入れた訳ではないと思います。けど、それが私の人生なら受け入れるしかない。せんせーに言ったって、何も出来ないんでしょ?何も出来ないことは、せんせーの方が悔しいと思うから」 「そうか。ありがとう…。僕に出来ることは何もないが、体調の変化があればすぐに来るように」 はい。と返事をして診察室を後にした。病名はまだついてない。ただ分かっていることは、普通の人よりもかなり短い寿命ということ。
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