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寝ることと、食べることとが一番好きだと言う彼女のイチゴを食べる数が少なく、不思議に思った俺は、どうしたの?と彼女に聞く。
「昨日、会社の飲み会でちょっとね食べすぎちゃって…しまったね。私も年取った証拠かな?」
と笑った彼女に少しの違和感を感じながらも、いつもの俺みたいだなと笑って、近くのイチゴをもぎって口に運んだ。完熟したイチゴは甘く口の中に広がったけれど、どこかに酸味を帯びていた。
いちご狩りのあとは、彼女のお気に入りのフレンチレストランで食事をした。何度も通うものだからスタッフからシェフまでとも顔見知りで、毎回シェフはテーブルまで来てくれるほどに。俺とだけじゃなくて、彼女は友人や両親との食事にもよく利用しているようで、スタッフとも楽しそうに談笑する彼女を見ている俺まで幸せな気持ちになる。
彼女はお気に入りのスタッフを呼んで、耳打ちをするとスタッフは喜んでと微笑み、キッチンへと下がっていった。暫くして戻ってきたスタッフの手には彼女の生まれ年のワインボトル。彼女がボトルキープをしていたものらしい。
俺は車だからと、シェフが同じ色のノンアルコールを用意してくれていたようで、すぐに彼女と同じ色をした飲み物が用意された。しかし、いつ来てもここのシェフには感動する。一度たりとも同じものを出すことはないし、好みをよくわかっている。俺には脂ののった牛肉のソテーで、彼女には白身魚のソテーだ。いつもあまり飲まない彼女が珍しいなと思いながらも俺たちはグラスを傾けた。
いつも通り、外まで見送ってくれたシェフに俺は軽く頭を下げて、シェフに手を振る少し千鳥足気味の彼女を支えて駐車場まで歩くと彼女は小さな声で、でもハッキリといった。
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