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あれは、夏の暑い日だった。最高気温が毎年更新されていく中、今年一暑いと言われた(その次の週に更新されてしまったが)日に俺は会社の先輩に所謂、婚活パーティー(正しくは、街コンらしい)に連れて行かれた。勿論、年齢的にもそろそろ結婚ということに目を向けなければならないことは分かってはいたが、会社の内部には女性はほとんどいない。
また、こういう場所に来る女性を好きなれるのかという不安もあった。立食式ではなく座って何分か話す方式を選んだのは先輩で、俺は特に気合を入れることなく会に参加した。そのときに運命的な出会いをしたのが今助手席で眠っている彼女だ。
一目惚れってやつだろうか?それとも最後で疲れていた俺の頭が幻覚を見せたのか、今となっては分からないがとにかく、彼女との交際がスタートするのに時間はかからなかった。
街コンと言っても大体の人間が結婚を視野に入れた出会いの場あることは言わずとも分かることで、彼女も次に付き合う人とは将来を考えられる人と付き合いたいと言っていた通りに、俺との将来を考えてくれているとは思っている。ただ彼女から結婚に関する話題をふられることが最近ないことに気づいた。時々見せる寂しそうな目線に、どこか心ここに在らずのような虚無感。触れようとしてやめるその仕草には戸惑いを感じられた。
俺は、気づかないふりをしていたけれど、実は彼女は俺との未来をもう描いてはいないのかもしれないとふとそんな嫌な考えがよぎり、頭をふって考えを打ち消した。
大丈夫だと自分に言い聞かせて彼女との思い出の海へとブレーキペダルを外し、ゆっくりとアクセルを踏み込んだ。
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