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もし願うならば、ずっと着かなければいいのにとそう思ってしまった自分に嫌気が差す。失いたくないという気持ちが多く、自分で思っていたより彼女のことを愛しているのだと改めて気づかされる。
「ずっとそばにいるって約束したろ?」
思わず出た言葉に彼女の寝息が一瞬止まったように思えたがまた、規則正しい呼吸が聞こえて来てなぜか安堵した。こんな重い男だなんて思われたくないからな。少しだけ開けていた窓から微かに潮の匂いが風に乗ってやって来た。そろそろ約束の場所に着く。
彼女を起こすために彼女の好きな曲を流す。そこで自分が無音で走っていたことに気づき、今日はやっぱり何かがおかしいとそう思いながら横で眠る彼女の寝顔をちらりと盗み見て幸せだとそう言い聞かせた。
俺がつけた音楽で目を覚ました彼女はあくびを噛み締めながら「おはよう」といってシフトレバーにかけていた俺の手を握った。おはようと答えて彼女の手を強く握りしめた。
「この曲好き。いつも目覚ましに使ってるやつ、さすがよく覚えてるね。」
「当たり前だろ?ハナのことなら手に取るようにわかるよ。」
「む。それ私のこと単純でおバカだって言いたいんでしょ?」
「はは、違うよ。それだけハナのことが好きだってことだよ。」
握りしめた手をもう一度強く握りしめた。俺から離れていかないでくれと言えない代わりにいつもより長く握りしめたんだ。
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