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外に出よう。と言って彼女は俺の手を振り払って車のドアを開けて外に出て行った。残された俺は、彼女の残り香を浅く吸いこんではいた。まだ大丈夫いつもの香りだ。
別れのサインはどの女でも同じだったりする。あれだけ触れ合ってた身体を全身で拒否するように、手を繋ぐことを嫌がり、いつもと違う香りを漂わせてさせて冷たく笑うんだ。そしてだいたい同じような事を言われる。
「貴方は、ワタシを見ていない。ネイルが変わった事に気づいて欲しいわけじゃないし、髪の毛を切ったことを言って欲しいわけじゃないけど。あまりにも周りに無関心だよ。言わないと分からないよ。さよなら」
走馬灯のように昔の記憶が巡って、俺は首を横に振った。ハナはわかってくれてるハズだ。大丈夫だと何度も言い聞かせて、車のドアを開けて、彼女が向かっている防波堤へと足を走らせた。
冬の海は寂しさを感じさせるように、とても静かだった。荒々しく波をうっているのが、冬の海の特徴のはずなのに、そこにあったのは、静寂だった。
「もう一度、海へと行った時は覚悟を決めてって言ったの覚えてる?」
彼女の声は、凛としていてその言葉に迷いは感じられなかった。だから、俺もしっかりそれに答えようと覚悟は決まってると返事をしようとしたけれど実際に出たのは空気のようなカスカスの声で相槌をしただけだ。
「貴方の思い浮かべてる、私とのこれからを私は叶えることができないと思う。」
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