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一瞬だけ頬を緩めたハナだったが、すぐに固く口を結んだ。
何かを言おうとして、押し込めてるような。
「最後まで愛してくれなくてよかったのに…馬鹿な人。好きよ?だから私のことは忘れて欲しいの、さよなら」
その声には、優しさしかなくて、表情も涙を堪えて微笑んで見せるハナに俺は何と答えるが正しいのだろうか。きっと、彼女を手放すことが、彼女の為になるのだろう。真っ直ぐに見つめる彼女の瞳には俺との未来がないようにもみえた。
「とりあえず、家までは送る」
そういって俺は答えを出すのを後回しにした。冬の海風は冷たく、小凍えてしまいそうになる。俺は首に巻いていたマフラーを外して、ハナの首に巻きつけた。
「女は身体を冷やすのはよくないだろ?家まで着けてろ」
「…うん。ありがとう」
ここから彼女の家までは30分。
その間に返事を決めなければならない。俺は、いつものように彼女の手を取って車へと足を向けた。手を振り払われなかったのには感謝してる。この手の温もりを忘れない為に、いつもより歩みを遅めた。
(おれは、お前のことを1番に愛してる)
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