お弁当屋さん、始めました☆

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お弁当屋さん、始めました☆

当日、事前に教えられていた通り、お弁当屋さんの厨房へと続く裏口のドアを開けると、ぷぅんとオリエンタルな香りが鼻腔をくすぐった。 紺ボーダーのロンTにジーンズ、その上から黒いエプロンを付けたイケメンが小皿を片手に首を傾げている。 「おはようございます」 少し声を張ると、驚いたように、こちらを向いた。 「あ、ああ! って。もう、そんな時間??」 壁に掛かる、無機質なデジタル時計の表示は08:57。 約束通りの時間だ。 「はい。今日は宜しくお願い致します」 そう言うと、イケメンが小皿に口を当てつつ頷いた。 初めて入る、お弁当屋さんの厨房。 コンロが何口もあるような大きな物を想像していたけど、実際は普通の家のキッチンと変わらない。 こじんまりとしていて、大人が2人で立つと、少々の圧迫感。 でも、沢山の調理器具や調味料が所狭しと並んでいるのは圧巻。 家庭では見ないような変わった物もチラホラ。 「実は今ね、白身魚のフライに合わせる新しいソースの開発をしてたんだ。 でも、なかなか、コレって物が出来なくて。 そうだ、ちょっと味見して?」 そう言って、淡い緑色のソースの付いたスプーンを渡してきた。 鼻に近づけてみると、独特な強い香り。入ってきた時に感じた匂いはコレだ。 「フェンネルが入ってますね!」 すると、イケメンが嬉しそうに頷く。 「そう! よく分かったね。ちょっと舐めてみて」
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