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スウィートタイム
夢うつつ定まらず、うつらうつらと揺蕩う世界の中。カカオの芳醇な香りが漂っている。その正体を想像するだけで、唾液が口内に湧き上がってくる。
そこで僕の意識は徐々に覚醒し始める。そうだ。さっきまで僕は自分の部屋で寝ていたんだ。でも、こんなに甘そうな香りを放つ物なんて部屋に持ち込んだ覚えは無いんだけども。
「ヤッホー。どうやらお目覚めのようだねー」
どこからともなく発せられたのは、女性の声だろうか。その発生源を確かめるべく、僕は上半身を起こす。その光景に驚きを隠せなかった。
視線の先にあったのは、人間ぐらいの大きさの物体だった。姿形は人間、しかも女の子のようだ。ところどころに柔らかな曲線があり、女性特有の丸みのように見える。全身の表面は濃いブラウン色に染められていて、どことなく硬質な感じがする。生き物というよりも鉱物を連想させる出で立ち。一糸まとわぬ姿にも関わらず、淫猥な雰囲気を感じない。
カカオの香りはその物体の方から漂ってきているようだ。
顔らしき部分には目、鼻、口と人らしいパーツがあって、それらは微笑みをかたどっている。
「これは……夢?」
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