スウィートタイム

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 自分の頬をつねってみる。うん痛い。どうやらこれは現実らしい。 「おはよう、少年くん。勝手にお邪魔させてもらってるよー」  謎の物体(女の子?)が右手をグーパーと開閉する。ひとりでに動いているのだから、物体というよりも生き物として認識した方が良さそうだ。それでも人間と呼ぶにはあまりにも出で立ちが奇妙だ。 「誰なんですか、あなたは……?」 「アタシはサキュバスちゃんです。全身チョコレートでできた、バレンタイン仕様の悪魔なのですっ」  堂々と名乗られた。それなのに、依然として理解することができなかった。なんとか思考を巡らせて、ようやく理解できたのは、 「そうか。今日はバレンタインデーか」  という脱線した事実だった。 「サキュバスちゃんはね、いかにもモテなさそうな冴えない男子達の所へ行って、精力を吸い上げるのが目的なの。おめでとう。君はサキュバスちゃんに選ばれた栄誉ある少年くんなんだよ」 「いやいやいやいや! サキュバスちゃんはね、とか言われても全然納得できないから! ていうか、選ばれたって何も嬉しくないじゃん! 誰が非モテだよ、失礼な!」  とは言いつつ、モテないのは厳然たる事実だった。いと悲し。     
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