スウィートタイム

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 顎に添えられた手に力が入る。と思いきや、開いた口を閉じさせられる。パキリ、と加えた悪魔の指もろとも。溶けかけたソレは、唾液と一緒に体の中へ侵入する。喉元まで来たソレを反射的に嚥下する。 「うんうん。いい顔してるよ、キミ。さぁさぁ、もっと味わって……」  うっとりとした表情を浮かべる悪魔。空洞のできた指先が僕の口元へ運ばれる。それに呼応するように口が開かれる。何故か拒もうという意識は芽生えなかった。  バキバキ、と小気味いい音を立てて、悪魔の手を咀嚼していく。  なんて背徳的な味なのだろう。チョコとはいえ、人の形を模したモノを食することの罪悪感たるや。罪の意識がスパイスとなって、カカオの味が一層深みを増している。 「あぁ。そんなにむしゃぶりついちゃって……まるでブタさんみたい」  恍惚とした悪魔の眼差し。そんな目で見られると、やけに心が昂ぶってしまう。そんな昂りが僕の食をさらに進める。  次々に迫り来るチョコレートの甘味。形を喪っていく悪魔の手。それを狂ったように頬張る僕の口。顔中にベタ付くチョコなんてお構いなし。  天にも昇る心地というのは、こういう感覚なのかもしれない。一切の邪念を抱くことなく、ただただ甘い世界に興じていられるこの時間こそ、幸せと呼べるものなんだろう。  この時間がずっと続けばいいのに。ふと、そんなことを思った────。     
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