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(Side:工藤)
スポーツ大会など、別に楽しみにしていたわけではない。
自分の競技など適当にやって、早々に負けて。
庵様の応援にでも徹しようと思っていた。
毎年そうしていたから。
大勢いる観戦客の1人になどなってたまるか、と。
でも、今年は違った。
対戦相手になど興味はなかった。
だから、見てなかったというのもある。
自分の中心は常に彼で。
彼の出る競技とその試合時間にしか興味などない。
コートで対面して知る。
今回の相手が誰なのかを。
そして睨まれて気づく対抗心。
『あんたには負けない』
言葉は聞こえないのに、そう言われている気がして睨み返してやる。
『やれるもんなら』
そんな気持ちも込めて。
生憎バスケは得意分野。
「勝ったら俺が庵くんにアプローチするの認めてくださいね、隊長さん」
ジャンプボール間際、スッとやってきた彼がボソッと囁く。
その顔があまりにも自信に満ち溢れていて。
つい、否定を忘れ睨みを強くしてしまった。
大丈夫、勝てばいい。
この時はそう思っていた。
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