第3話 スポーツ大会編

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(Side:工藤) ボールを呼べば、クラスメイトは驚いた顔を見せたが指示通りボールが集まってきた。 同じように相手にもボールが集まる。 認めたくはないが、実力は互角。 でも。 負けるわけがない。 2点差で迎えた、恐らく最終ターン。 これを打たせなければ勝ち。 そう確信して手を出した時。 ボールが彼の手から消えた。 目がボールの行方を追ったときにはすでにボールは放物線を描いていて。 ブザーの音が響く。 歓声がブザーの音を搔き消し、聞こえないはずの2人のハイタッチの音が聞こえた気がした。 呆然と立ち尽くす中、クラスメイトに背中を叩かれ意識を時計へ移せば、庵様の試合が始まる時間が差し迫っていた。 「約束、いいですよね」 呼び止められた声を無視しても良かった。 でも、そうしなかったのは、その言葉が不服だったから。 「約束だなんて、よく言えますね」 小馬鹿にしたように笑ってやる。 「勘違いしないでくださいよ。俺は『勝ったら』と言ったんです。そこに1on1というルールなんてなかった。だから、誰に頼ろうと構わないでしょ。時には頼るってことも大事ですよ」 この男は、こちらが他人に頼ることなどしないことをわかってて、あえてそう言っているのだ。 誰かに頼るだなんてあり得ない。 庵様以外、周りは皆敵なのだから。 でも。 ハイタッチをする2人を見たとき、少しだけ、ほんの少しだけ、羨ましいと思ってしまったのは。 きっと気のせい。 そう言い聞かせ、すでに始まっているであろう庵様の試合へと急いだ。
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