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(Side :柊二)
去っていく後ろ姿にしてやったりな気分になる。
向こうでは最後にブザービートを決めた我がクラスの英雄(バスケ部)が俺を呼んでいる。
「本当、お前すごい度胸だよな。あの先輩に楯突くとか。ま、きっと俺も共犯扱いなんだろうけど」
対戦相手を知ったとき、これは是が非でも勝たなければと思った。
ラッキーなことにメンバーには1年生にしてバスケ部のエースと謳われている男がいる。
あくまで俺と奴の真剣勝負。
チームが負けそうになったらパスを出すと打ち合わせはしてあったものの。
本当にドンピシャのタイミングで、ドンピシャの場所に位置取っていた彼の状況判断と、あの緊張感の中で寸分の狂いもなくネットを通す高性能なそのバスケセンスに脱帽である。
こういうスポーツ少年、モテるんだろうな。
なんて思ってみたり。
「バスケ部入りゃいいのに」
バスケ自体は好きだし、アメリカにいたときからストリートで遊んでいたという経験もあるため、悪くはない誘いだとは思う。
が、あくまで遊びのバスケが好きなだけで、部活としてガツガツやるのはあまり魅力を感じない。
「ってか、ギャラリー減ったな」
フと観戦席を見れば、そこにいたギャラリーは殆どが姿を消していた。
「ま、今頃武道館が盛り上がってるだろうしな」
あ!
そうだよ!
庵くんの試合の時間ではないか!
試合に勝った余韻ですっかり忘れていた。
いや、奴に勝った優越感でか。
どちらにせよ、だから奴はそそくさと姿を消したのかと納得する。
「今更行っても、きっと見られないですよ」
後ろから声が聞こえたのと、歓声が上がったのはほぼ同時だった。
なんとか聞き取った俺の耳を褒めてやりたい。
隣ではバスケ少年が顔を引きつらせて一歩下がっていた。
そのオーラに当てられたのだろう。
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