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(Side :柊二)
そういえば、この人もバスケに名前があったな、と記憶を巡らせる。
バスケのようなスポーツをするイメージなど皆無だったが、情報によれば彼は昨年もこの種目に参加したらしい。
今行われている試合が終われば、彼属する3年S組が登場する。
アップでもしにきたのだろう。
「今行ったところで、武道館の入り口は人で溢れかえっていますよ。少なくとも庵の試合が終わるまでは」
まるでその光景を見てきたかのような物言い。
「実際その場から来ましたので。彼の親衛隊長が思ったよりも遅く来たので、何かあったのかと思えば。相手が貴方だったようですね」
まるで眼中にないかのように口端を上げるその顔は、きっとファンが見れば絶叫モノなんだろう。
実際、バスケ少年はバッと顔を背けている。
お?
「では、一戦交えるのを楽しみにしていますね」
そう言って去っていった彼の背を見ながらバスケ少年に尋ねる。
「もしかして、副会長のファンだったりする?」
だとしたら、直接対決は不利だよな……
「いやいや、あれはファンじゃなくても……。俺はどちらかと言うと会長派だ」
……
サラッと爆弾発言をしたバスケ少年をキリッと睨みつける。
「そんな顔すんなよ。別に親衛隊にも入ってないし。遠い存在すぎて手を伸ばそうとも思わないよ。雲の上の存在さ。言うなればテレビ画面の向こうの憧れの存在、だな。一般生徒なんかみんなそんなもんだろ。少しでも関われただけで超ラッキーだ」
そんなこと知ったこっちゃないけど。
俺からしたら庵くんは近い存在だし。
「で、会長の試合見に行くのか?」
ああ言われてしまえば足も遠のく。
すると、ポケットの中のスマホが震えた。
バスケ少年も同じように自分のスマホの画面を覗く。
便利な世の中だ。
開いたメール画面には各競技の速報が送られてきていた。
【剣道第2試合 3年S組 勝利】
沢山の結果が連なるなか、その一点しか目に付かなかった。
応援にはまた後でいける。
そう決めて、次に行われる副会長の試合を観戦することにした。
噂の優勝候補に勝つために。
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