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(Side:柊二)
副会長属する3年S組の試合が始まると、次第に人が増えてきた。
庵くんの試合を見ていた連中が流れてきたのだろう。
確かに3年S組は強い。
5人全員の動きが良く、バランスも上手くとれているのだ。
副会長も例のごとく歓声を集めている。
試合の歓声とは違う騒めきが入り口の方からしたかと思えば、体育館の温度が一気に上昇した。
何事かとそちらに目をやれば、なんとなく想像していた通りの現象が。
誰よりも視線を集めていらっしゃる我が従兄弟様。
本当、目立ちすぎ。
「会長様の袴姿…///」
「ステキ〜〜〜っ///」
「写真、写真!」
試合に勝ってそのまま来たのだろう。
よりによって袴姿を晒す必要はないと思う。
隣にはこれまた袴姿の見知らぬ男。
何、またライバル?
試合そっちのけで庵くんの隣に並ぶ男を睨みつけていれば、試合を見ていたらしいバスケ少年に頭を叩かれた。
痛い。
「だから、そんな睨むなって。あの人は3Sの委員長。外に彼女がいる、会長と同じノーマルだ」
ふーん。
だから陰口が聞こえないわけね。
でもさ、ノーマルだからって油断しちゃダメじゃね?
そんなのは、所詮今までの恋愛歴。
何かの拍子に庵くんにベクトルが向くこともあり得なくはない。
人は、いつ、どのタイミングで、誰を好きになるかなんてわからない。
でしょ、庵くん……
「んなことより、ちゃんと試合見ろ。いずれ当たるぞ、3S」
観戦席とは別空間のように繰り広げられる試合に目をやる。
きっと庵くんは彼らを応援に来たのだろう。
当たると言っても、俺らが3Sと当たるのは決勝。
もちろん、そこまで残るつもりではいるが。
俺らと3Sが対戦したら、俺のことも応援してくれるかな?
試合を終え、ハイタッチする3Sのメンバーに笑顔で手を挙げる庵くんを見ながら、嫉妬する気持ちを抑えられずにいた。
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