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夕暮れ。
少女は、黒い大きな犬に追われていた。犬は少女を噛み殺す勢いで迫ってきた。
一瞬のすきをついて逃げ込んだところは昔からの大きな墓地だった。
墓が隠れ蓑になる。少女は犬が追ってこないことに安心して、その場に座り込んだ。
足に鋭い痛みを感じて見てみると、どこかで引っ掛けたのか傷ができ、血がでてきた。
少女の足から血が滴り落ち、一つの墓の土の上に一滴、にじんでいった。
すると、土がボコボコと盛り上がり、中から一つの手が出てきて少女の小さな足をつかんだ。
少女は驚き、動くことができなかった。
「血の契約は結ばれた」
どこからか声が聞こえ、その手がどんどん伸び、少女の前に一人の綺麗な青年が現れた。
少女は驚いて、その顔を見上げた。
さっきの犬が口から涎をたらし、少女を追ってきた。
青年は犬にむかって指先をはじくと、犬は何かに驚いて子犬のように逃げていった。
「君をこれから、ずっと守ろう」
青年は言った。
長い時間が経った。
少女は年をとり最後の日を迎える時がきた。
傍らに以前と変わらない青年が現れた。
老女となった少女は青年に言った。
「あなたのおかげで素晴らしい人生がおくれたわ。本当にありがとう。」
青年は言った。
「安心して眠るがいい。これから君が何度生まれ変わったとしても、僕は君を守っていくよ。」
「では、死ぬことは何も怖くないわ、またあなたに逢えるのですから。」
そう言って老女は静かに目を閉じた。
「何度生まれ変わっても君を守るよ。」
青年は、そっと老女の頬にキスをした。
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