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制約
魂の水先案内人カロンに連れられ、深い闇の中を突き進む。
「カロン、俺は行きたくない」
「それは無理な相談だ。何度も話したろ?」
いきなり館に現れ、俺は連れ出された。冥界の掟に従い、悪魔に生まれ変わった俺を、カロンは迎えに来た。
「此処だ。案内はここまでだ、まっすぐ進め」
霧が立ち込めた向こう、城が目の前に見えて来た。禍々しい空気が辺りを包む。
一人きり、霧の中を進んだ。
城へ着くと、長い廊下を歩かされた。
「謁見の間だ」
従者は重い扉を開いた。黒い翼を持つ者達が十数人。獣の顔を持つ者が、左右に数人ずつ。
悪魔と魔物達が、そこにいた。
『ラビエル』
直接頭の中に響く深く低い声。聞き覚えのあるその声は、冥界の王ハデス。
俺はその場に膝まづいた。
『天の掟に背いた者よ。お前はこれより冥界の住人となるがよい』
嫌だ。嫌だ……… しかし、この黒い翼以外に、もう俺には何も無い。
『不服か、これは掟じゃ』
人を愛した。ただ、それだけだった。それだけで、高位天使の位を奪われ、命を追われた。
『ラビエル、私に隠し事は無駄だ。不服なら述べてみよ』
冥王ハデス。全知全能の神ゼウスと互角の力を持つと名高い、冥界の神。
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