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頭を抱えて逃げ回る。頭上からは煙が出ていた。
「今の俺は悪魔なんでね。次は手加減しない」
もう一度、右手をバッサーゴに向けた。
「ま、待って。話しますって」
場所を外へ移した。人にこの姿を見られるわけにはいかない。バッサーゴを連れ、雲より高く空へ上がった。
「随分、用心されてますなあ」
後ろを付いてくるバッサーゴは首をかしげた。
「稀に見える人間もおりますけどさ、たいがいの人間にはあっしらの姿は見えませんぜ??」
その、稀に見える人間、というのに注意してるんだよ。俺にはハデス様との制約がある。
雲の中に姿を紛れさせた。
「で、何故あの人間のそばにいた?」
「あっしがバラしたって、言わねえで下さいよ。ルサールカ様の命令ですわ」
邪悪な悪魔で名が知れたルサールカ。姿は人魚のように美しく、水の精霊の様に見え、その歌声は多くの男性を惹き寄せるという。
ルサールカに葬られた魂を、どれだけ天に導いたか。
「まさか、あの人間もか?」
湖で事故にあったと言っていた。それから意識不明だと。
「水の底に引きずり込んで、失敗したらしいんですわ。助けが入ったとかで」
「それで? ルサールカの目的は?」
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