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「ほんとにあっしが話したの、言わないで下さいよ。ラビエル様、気づかれましたか? あの人間、守護がついてなかったでしょう」
そうだ。バッサーゴにばかり、気をとられていた。
「ルサールカ様の呪術でさあ。守護は呪術のせいで近寄れやせんでしょ。あの人間は間もなく死神が呼びに来ますやね」
そういうことか。本来、死ぬ予定のない者を呪い殺そうとしているんだ。まだ死神がやって来ていなかったわけか。
「あっしはあの人間の最期を確認しに来てたわけでさ」
ルサールカの命令。元凶は判明した。
「行こうか、バッサーゴ。案内しろ」
ルサールカのいる湖へ。にんまり、笑って見せた。
「か、勘弁してくだせえよ。ラビエル様っ」
あとずさりするバッサーゴを見下げる。
「………今、ここで死にたいか?」
「案内だけですぜ、後は勘弁してくだせ」
交渉成立。すごすごと後についてくる。俺は大きく翼を広げた。
しばらく空を飛び続けていた。眼下には街並みが見えた。前方には遠く山が見えてきていた。
だいぶ、家と家の距離が離れてきた頃には、辺りは田畑や森が見え始め、景色が変わりだした。
「ほら、見えまっせ」
バッサーゴが指を指した。陽の光に反射され、まるで硝子玉のように煌く水面が視界に入った。
「じゃ、あっしはここで」
「待て。ルサールカを呼び出す方法は?」
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