対峙

3/11
79人が本棚に入れています
本棚に追加
/154ページ
「ほんとにあっしが話したの、言わないで下さいよ。ラビエル様、気づかれましたか? あの人間、守護がついてなかったでしょう」 そうだ。バッサーゴにばかり、気をとられていた。 「ルサールカ様の呪術でさあ。守護は呪術のせいで近寄れやせんでしょ。あの人間は間もなく死神が呼びに来ますやね」  そういうことか。本来、死ぬ予定のない者を呪い殺そうとしているんだ。まだ死神がやって来ていなかったわけか。 「あっしはあの人間の最期を確認しに来てたわけでさ」 ルサールカの命令。元凶は判明した。 「行こうか、バッサーゴ。案内しろ」 ルサールカのいる湖へ。にんまり、笑って見せた。 「か、勘弁してくだせえよ。ラビエル様っ」 あとずさりするバッサーゴを見下げる。 「………今、ここで死にたいか?」 「案内だけですぜ、後は勘弁してくだせ」 交渉成立。すごすごと後についてくる。俺は大きく翼を広げた。  しばらく空を飛び続けていた。眼下には街並みが見えた。前方には遠く山が見えてきていた。  だいぶ、家と家の距離が離れてきた頃には、辺りは田畑や森が見え始め、景色が変わりだした。    「ほら、見えまっせ」 バッサーゴが指を指した。陽の光に反射され、まるで硝子玉のように煌く水面が視界に入った。 「じゃ、あっしはここで」 「待て。ルサールカを呼び出す方法は?」     
/154ページ

最初のコメントを投稿しよう!