対峙

4/11
79人が本棚に入れています
本棚に追加
/154ページ
捻り曲がったバッサーゴの土色の翼を掴む。 「いててっ。気まぐれな方ですからね、方法はありやせん」 「お前はどうやって会う?」 あれほど美しい煌めきを放つ湖に、潜む悪魔。 「日に一度は、必ず現れますぜ。あっしはそれを待つだけでさ。じゃ、ほんとにあっしはここで」 逃げるように立ち去る。よほどルサールカを恐れているらしい。  不思議だった。堕天してから百年余りの時間を、たった一人で光さえ差し込まない館で過ごした。  悪魔に生まれ変わり、絶望した。それが、どうだ? 想い続け願い続け、この世界に降り立った。  途端にこの状況だ。なんだか可笑しくて笑いがこみ上げた。まだまだ、何が起きるか、わかったもんじゃないな。  さて、行くか。邪悪な悪魔ルサールカの元へ。  眼下に見えた湖のほとりに立ち、翼をしまう。辺りを見渡しても、やはりルサールカの姿は無い。  待つか、水の底へ潜るか。いや、水の中ではルサールカが有利だ。争いになった場合を想定した。  生い茂る木々の向こう、気配がした。人では無い、魔の者の気配が近づいて来る。  ガサガサ―― 葉が揺れ動く。  隙間から顔を出したのは、中性的な顔立ちの、一人の男。 「あんた、何をしに来た?」 気配でわかる。男は俺と同じ、悪魔だ。     
/154ページ

最初のコメントを投稿しよう!