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捻り曲がったバッサーゴの土色の翼を掴む。
「いててっ。気まぐれな方ですからね、方法はありやせん」
「お前はどうやって会う?」
あれほど美しい煌めきを放つ湖に、潜む悪魔。
「日に一度は、必ず現れますぜ。あっしはそれを待つだけでさ。じゃ、ほんとにあっしはここで」
逃げるように立ち去る。よほどルサールカを恐れているらしい。
不思議だった。堕天してから百年余りの時間を、たった一人で光さえ差し込まない館で過ごした。
悪魔に生まれ変わり、絶望した。それが、どうだ? 想い続け願い続け、この世界に降り立った。
途端にこの状況だ。なんだか可笑しくて笑いがこみ上げた。まだまだ、何が起きるか、わかったもんじゃないな。
さて、行くか。邪悪な悪魔ルサールカの元へ。
眼下に見えた湖のほとりに立ち、翼をしまう。辺りを見渡しても、やはりルサールカの姿は無い。
待つか、水の底へ潜るか。いや、水の中ではルサールカが有利だ。争いになった場合を想定した。
生い茂る木々の向こう、気配がした。人では無い、魔の者の気配が近づいて来る。
ガサガサ―― 葉が揺れ動く。
隙間から顔を出したのは、中性的な顔立ちの、一人の男。
「あんた、何をしに来た?」
気配でわかる。男は俺と同じ、悪魔だ。
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